『福島県議会海外行政調査④ デンマーク報告書2 (椎根健雄)』 |
デンマーク社会省(デンマーク)
日時:平成28年11月3日(木) 10時00分~12時00分
【団長挨拶(柳沼 団長)】
柳沼団長より、福島のお土産を贈呈。東日本大震災より震災・原発事故で厳しい状況でした。この間、デンマークの方々にお世話になり、ありがとうございました。高福祉高負担の社会を学習させて頂ければと思います。本日は早朝よりありがとうございます。
【調査先】
高福祉国家として、高負担ではあるものの手厚い社会保障制度を実現している高福祉国家の医療費無料、出産費無料等の政策等を調査し、本県における様々な課題の解決に活かしていく。
【調査目的】
・福祉政策の調査
・(福島県が独自で行っている、18歳以下の医療費無料化と日本一子育てしやすい県を目指すうえでの比較)
・出産費無料等の政策調査
調査結果
デンマークのシステムについてお答えしたいと思います。社会の福祉、障がい者、成人における福祉についてお話しをさせて頂ければと思います。市の行政についてお話しします。福祉において、すべての方々は生活保護を受けることができます。税金で賄われるので直接税が高いです。EUの中においても一番高い税金であり、34.6%が社会保障になっている。社会福祉にかんしますと98%が市の責任のもと執行される。市の権限が高いのは、市のほうが市民に近いからである。国の決めた枠内で行うので、市が何でもできるわけではない。市でおかしいと思った時には国へ言う事もできる。市のことに対しての規則をつくり管理するのが、こちら社会省の仕事であります。
成人の方でもホームレスがいて、麻薬、お酒、精神的な問題の方もいる。家が無いという問題だけではない。このところホームレスの方々が増えてきているので、新しい政策を取り入れる必要がある。昔は一晩泊まれるところを提供してきただけであるが、どんな社会背景によりホームレスになったのかを探っている。今、行っている事は住居を与える、それを解決した後に食べていく事ができるか、生活を取り戻す方法の援助を行っています。ある市で行った取り組みがうまくいったので、様々な市へ広げているところである。そのおかげでホームレスが少なくなってきた。高い住居を与えることは難しいのが課題である。これはデンマーク人の話である。外国人のホームレスは対応していない。約6000人のデンマーク人ホームレスがいる。公共住宅はあるのだが、いくらを稼ぐことができて、生活をどのように改善させるかに取り組んでいる。一日に500~1000ユーロを与えている。生活保護という形で対応をしていく。都市部と地方のホームレスの割合は、3分の2は都市部である。基本は生まれた所の市が経済的に面倒をみる。その確認はマイナンバーで行う事ができる。
ハンディキャップの方々(障がい者)について。「私たちは障がい者の限界ではなく、可能性を見ていこうとしています。」労働市場に入れるように、補助、補助金又は人間を出しています。フレックスジョブとして、何時間か働いてもらい、残りは市がお金をだす。デンマークは37時間労働なっている。障がい者の方々が働けるのは3~4時間。(障がい者の雇用状況はどのようになっているのか?今障がい者の5人に1人は職を持っている。)デンマークは障がい者を記録する事はしていない、普通の方々としてみているので、数の把握はしていない。デンマークでは、この会社で何名を雇えという話は無い。会社が障がい者を雇えば、会社のステータスとなったり、補助金を得る事ができる。今のところ、障がい者はだいたい15000クローネ(24万円)ぐらいの給料をもらえる。働く意欲のある方々は、いずれはそれを打破したいと考えている。その方々が働き易いように会社で必要な物が補助される。会社の中をうまくやっていくように、ソフトの面でも補助をだしている。教育については特別学級にするのではなく、普通教室に入れるようにしている。障がいの度合いが高い子が入る学校も当然つくってあります。日本では補助教員を増やしたりしているが、デンマークにおいても特別な支援員を入れています。この国は大学まで教育が無料になっているので、教育に対するお金の心配は無いのです。
社会省(政府)の目的について。国のほうが目的を市に与えて、このように変えてほしいという事ができる。社会全体として国会が決めました。子どもたちへ。10年生以降の学校へ進んでほしい、悪い道へ進まないようにしてほしい。教育を受けることができなかった大人たち、麻薬・アルコール依存症、ホームレスを少なくしましょう。普通の生活へ戻れるように、結果が難しい。マイナンバーでその方々の生活改善を見ることができるのです。98の市の中で、この市はこういう政策がよいが、この点は改善が難しいという事が、マイナンバーからみえてくる。うまくいった例をほかの市へ当てはめていくこともできる。社会省としては、データより他の市へたいして当てはめていく事ができるのです。それらの情報分析も行なっている。私たちの目的はここにあると伝え、市と協力して改善を行っていく。市の差はでてくるものなので、同じようになれとは言っていない。
デンマークは98の市と5つの地域に分かれている。市の人口は平均5500人。60万人~160万人の地域に分かれている。市の役割は、社会保障、高齢者の面倒をみる在宅介護、子どものしせつ、生活保護、失業者の対策について。教育と文化について、10年間の義務教育について、劇場や図書館について、文化施設、環境計画、道路の整備、水道、暖房、ゴミ関係について行っているが、現在民間に多くの仕事が移っている。病院、健康保険について、計画交通。地域と市は異なった団体であり、同じことは行わない。住民が地域で代表を立てられる。国が市に対して、法律で何を行うのかを決めている。国は市に何をするようにと、命令を出すことはできない。4年に1度選挙が行われる。議会が市長を決めていくやりかたである。市議会から組長が選ばれる。市長は3つの機能を持つ、議長を選ぶ、経済的、町のトップであり、行政の公務員のトップ。市が法律に元づいて行っているかをチェックする役割がある。
現在、人口減少(210万人→192万人)そして高齢者が増えていて、年金受給年齢がどんどん上がってきている。極端な少子高齢社会。日本と同じくデンマークが抱える問題である。
【所見】
日本に比べ高負担ではあるが、医療福祉政策、教育の充実・無料化等により、デンマークでは安心して子育てができ老後を迎えられている。若い世代における教育と医療費の無料化は、子育てにお金がかかり収入が少ない世代にとって、安心して子育てができるよりどころとなっている。本県においても独自で進めている、18歳以下の医療費の無料化は、今後も継続充実をさせ、日本一子育てのしやすい福島を目指していくべきである。