2016年 12月 01日
『福島県議会海外行政調査① フランス報告書 (椎根健雄)』 |
福島県議会で行われた海外行政調査に参加してまいりました。
フランス、ノルウェー、デンマークの3か国を訪問。
フランスでは原発の廃炉解体、処分場問題の調査。
ノルウェー、デンマークでは再生可能エネルギー、福祉問題を調査。
昨日、私の報告書がまとまりましたので福島県議会へ提出しました。
容量の関係で各国ごとに報告書をのせます。
以下、ご覧いただければと思います。
福島県議会 海外行政調査 報告書(フランス)
廃炉対策・エネルギー政策及び福祉政策関係調査(北欧班)
( 報告書作成者:椎根 健雄 )
調査目的
震災及び原発事故後における本県の重要課題としては、原発事故の完全収束、県内原発「全機廃炉」に向けた廃炉作業の促進、放射性廃棄物の処理対策などが山積している。また、「再生可能エネルギーの先駆けの地」を目指す本県は、「福島県復興計画」において目指している「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり」の実現に向け、再生可能エネルギーの活用による環境との共生が図られた社会づくりの推進が求められている。
2040年頃を目途に県内エネルギー需要の100%相当以上の再生可能エネルギーを生み出すとした目標への歩みを着実に進めるため、新エネルギーによるエネルギーの地産地消の取組や、関連産業の集積に向けた動きを加速させる必要がある。
本県は、東日本大震災・原発事故の影響により、子どもと家庭を取り巻く環境が大きく変化している。また、急速な少子化の進行に対応するためにも、社会全体で子育てを支援する体制づくりを進め、安心して子どもを産み、育てることができ、かつ、子どもが大切にされる社会を目指す必要がある。
マルクール原子力地区(フランス)
日時:平成28年10月27日(木) 13時00分~16時15分
対応者:フィリップ・ギーベルト(CEAマルクール地区所長)
:サミュエル・ブランシャール (UP1解体プロジェクト責任者)
:マガリ・バーシェル (CEAコミュニケーション副部長)
:ドミニク・ブィタリ (CEA国際関係部員)
:シルバン・グリニョン(マルクール地区 訪問センター担当)
:フランク・ローラン (フェニックス施設長)
※CEAとは、フランスの原子力代替エネルギー庁の事
※CP1、フェニックスは原子炉名
【団長挨拶(柳沼 団長)】
東日本大震災においては、ご支援を頂きありがとうございます。本日の調査を震災からの復興に役立てたいと思いますので、よろしくお願いします。
【調査先】
原発の先進技術を活用した、原子力発電所の解体作業地区。パリの南約600キロ。ブドウ畑に囲まれた約280ヘクタールに、核施設が集うマルクール原子力地区がある。その中で原子力発電所の解体が進む。フランスで国内初となるプルトニウムを抽出していた原発の再処理工場「UP1」と高速炉の「フェニックス」調査。
「UP1」で行われている解体作業は、汚染エリアの測定、切断、放射性物質の飛散防止、搬出ルートの選定など幅広い分野の複合技術であり、大半が遠隔操作で行われている。より安全な技術の選択肢を組み合わせながら進める廃炉の現状を学ぶ。
フェニックス(高速炉)は1974年~2009年に稼働。現在、解体を行う準備を進めている。
【調査目的】
廃炉、解体に関する調査
・廃炉、解体技術
・作業環境、情報公開
・廃炉工程、予算
・福島第一原発事故後の原子力政策
・福島第一原発事故収束に向けてのアドバイス
※高度な廃炉技術のノウハウを本県の原子炉の解体作業等の促進にいかす。
調査結果
【廃炉技術について】
作業員がモニターを見ながら遠隔操作でロボットを操り、汚染された部分を切断する。ロボットは構造が複雑で狭い場所でも、かなり柔軟に動かすことができる。それでも、再処理工場は汚染度が高い場所が多く、液体状の廃棄物の扱いも難しいため、97年に停止したUP1の解体を終えるのは2035年ごろ、40年はかかるという。
科学的な液体により除染を行い、ロボットや人間により解体、切断、一つ一つ片づけていく。液体はガラス固化している。現在、マイストロというレーザーを使用し切断を行うことができる機械を利用(マイストロは、去年の12月より世界初の利用が始まった、最新機である)。
マイストロはアームの先端を変化させる事ができ、30分で人が死ぬ高レベルの解体を行える。アームを原子炉に入れ、1500個ほどに解体、解体物を梱包してセメント化、最終的に大きな12個のセメントにする。
フェニックス(高速炉)においては、国より100%の研究費を頂き、廃炉ロボットや、廃炉に関わる研究、高濃度の放射線量を低減させる研究を行っている。解体においてはロボットを使用。原子炉を高レベルから低レベルにするのは、時間をかけ一つ一つ物理的に行っていく必要がある。線量の低下に向けて、特殊なガスを充満させその後洗浄する方法を行っている。
【主な質問内容】
解体地区における住民への情報公開はどのように行っているのか?
(CEAには住民への情報公開に対し独立した部がある。原子力の透明性をめざすための独立した部である。これは法律で決まっている。常に広報により情報を公開し、報告書も定期的に発行している。)
独立した情報公開の部というのは、どのようなメンバー構成か?
(地域の議員、農業者、研究者、様々な職種の方々で構成されて、独立性が保たれている。)
高レベル廃棄物の最終処分場の場所は決まっているのか?
(現在ビュールとアンドラに計画中であるが、世界的に最終処分場はオンカロ以外には無い。現在はこの場所に保管しているのが状況である。)
福島の事故にもここで使われる廃炉技術は利用可能か?
(マイストロの機械は高レベルの放射線の現場でも利用可能である。ただ、解体、そして除染にはものすごい時間がかかる。)
【所見】
本県の重要課題として掲げる原発事故の完全収束、県内原発「全機廃炉」に向けた廃炉作業の促進には、マルクールで行われているような遠隔操作ロボットを活用した技術等は欠かせない。フランスで行われている高度な廃炉技術のノウハウを、本県の原子炉解体作業の促進に活かしていくべきである。
現存する原子力発電所の廃炉にも相当な年月と技術を必要としている。そういった意味で、事故がおきた本県第一原発の廃炉は、困難を極めると同時に、国家レベルの作業として長期にわたって取り組む人員、技術、お金、覚悟が必要である。
【マルクール原子力地区における調査の様子】
ローブ処分場(アンドラ)(フランス)
日時:平成28年10月28日(金) 9時30分~12時45分
対応者:シェルマ・トラバ 氏 (処分場広報担当責任者)
:チィエリー・ロショット 氏 (処分場広報担当)
【団長挨拶(柳沼 団長)】
東日本大震災においては、ご支援を頂きありがとうございます。本日の調査を震災からの復興に役立てたいと思いますので、よろしくお願いします。
【調査先】
1992年から操業。予定操業期間は60年。ピット(コンクリート)方式処分場。敷地面積95ha(うち処分場30ha)。定置容量1,000,000㎥(2008年末時点での定置量219,939㎥)閉鎖後は300年のモニタリングを実施予定。現在従業員約640名。操業費33,600,000ユーロ。
【調査目的】
・中低レベル短寿命廃棄物処分場についての調査
・施設の概要調査
・海外における放射性廃棄物処分の現状の調査
・本県における中間貯蔵施設の整備等についての課題を検討
調査結果
【処分場の役割と特徴について】
シェルマ・トラバ処分場広報担当責任者より、中・低レベルの放射性廃棄物処理施設と最終処分場の現状と問題点の説明を受けた。
ローブ処分場。各地よりでてくる放射性廃棄物を保管している。
フランスにおいては、原発以外にも、9パーセントは軍隊、3パーセント住宅、1パーセント医療関係から排出されている。核、クラス分けをして処分を行っている。半減期が31年以下のものと31年以上のものに区別して保管を行っている。一番長いもので45億年(ウラニウム238)セシウム137が30.1年の半減期になります。天然放射能になるまで300年監視する。ローブ処分場は、アンドラが中・低レベルの廃棄物を保管している。様々な放射性物質がある。レベルが高い、低い、半減期が長い、短いもある。それぞれの特性に応じてフランスでは保管場所が変わる。
アンドラは1991年まで原子力規制庁に属していた。現在は、研究省・エネルギー省・環境省に属している。半減期は長いが、低レベルは地表近くに保管(フランスにはここを含め3か所の処分場がある)。半減期が長く、レベルが高い物は、地中深くに保管している。放射性廃棄物の管理において世界最大規模である。
(その後、現地調査に入る。写真撮影は特定の場所以外、保安の関係で禁止)
ローブ処分場の大きな役割
1、廃棄物の監視
2、研究・廃棄物処分場の設計
3、発電所でない処からの廃棄物を保管
4、汚染された部分の除染
5、フランス全土での放射性廃棄物の排出の情報管理
6、一般の方、学校、地域への情報提供(教育施設も兼ねている)
放射性物質に対する対策
・放射性廃棄物の種類よって、管理の仕方が変わる。梱包の種類が違う。コンクリートや包装材が違う。
・雨から守るための建物がある(汚染物質がでた時に、その雨も貯める貯水槽もある。)
・岩盤の種類がよい(砂の層・粘土層・岩盤)と水がしみこまない地層である。
施設概要
・100万立方メートルまで保管できる施設である。
・保管場所が限られる為、廃棄物をコンパクトにする施設もある
・廃棄物の排出者は、フランス電力62%、原子力規制庁19%、アレバ社18%、のこり1%は医療関係の物で構成されている。
・各地の放射性物質の輩出状況を監視・管理している。(インターネットでもみる事ができる)
※大切なのは、放射性物質に対する情報の公開と安全性。
廃棄物は処分場、保管場が無かった初期、海に捨てていた時期もある。現在は、しっかり監視と保管をしている。ヨーロッパ諸国において15万トン海に捨てた。当時は海も汚染された。イギリスとフランスが一番初めに海への投棄を止めた歴史がある。
外国の放射性物質は受け入れてはいない。以前は保管をしていた時期もある。モナコだけは例外で、ドラム缶3つだけ引き受けている。
【所見】
本県が重要課題として位置づける中間貯蔵施設の整備等には、現在ローブで行われている中・低レベル放射性廃棄物の保管における技術は参考になる。このノウハウを、本県の中間貯蔵施設の整備に活かし課題を検討していくべき。
中低レベル短寿命廃棄物処分場施設は、地域住民への丁寧な説明と理解が必要である。また、候補地となる場所の安全性の確保は最優先である。情報の公開と、セキュリティーの確保をしっかり行う必要がある。
【ローブ処分場における調査の様子】
クレア・パリ事務所(フランス)
日時:平成28年10月28日(金) 16時00分~17時00分
対応者:荒井 陽一 氏 (クレア・パリ所長)
:古橋 悦子 氏 (クレア・パリ次長)
【団長挨拶(柳沼 団長)】
私たちは福島県海外行政調査の一行であります。震災、原発事故から5年7か月。この間、皆さま方々から様々なご支援を頂きましてありがとうございます。福島県は未だ風評被害に苦しんでいる。そういった中、人口減少など県は課題を抱えております。今回は、人口問題について調査をさせて頂ければと思います。
【調査先】
(財)自治体国際化協会パリ事務所(通称 クレア・パリ/CLAIR Paris)は、日本の地方公共団体等に対して支援を行っている。日本の地方公共団体が活動対象国(フランス、ベルギー(フランス語圏)、スイス(フランス語圏)、スペイン)で活動される際、訪問先へのアポイントメント、訪問期間の設定、通訳、国際比較や制度比較などに関する情報提供や支援をしている。
【調査目的】
・人口問題対策
・少子化対策の政策
・家族問題
・政府の支援策
・若者の就業
調査結果
【家族政策と子育て・結婚の現状について】
・フランスは出生率1.96、日本は1.46。その中をみていく。
・フランスにおいては女性の就業率が高く、25歳から49歳までの女性の労働力率は8割超えている。労働時間は週35時間労働(フランスは日本に比べ労働時間が短い関係で、男性が家事に加わる率も高い。)
・パックス(同性の結婚)を認めている。離婚をするのも簡単。
・総出生数中の婚外子の割合が5割を超すのが特徴(日本は2%)
・フランスの子育て支援政策は、高齢者や障がい者等も含めた家族全体を総合的に支援する国の「家族政策」の中に位置づけてある。仕事と家庭の両立を、保護者が望む形で実現できる仕組みを提供。
【子育てにおける税制面での優遇制度】
・子育て世帯に対する手当と税制上の優遇措置が併存(日本は手当のみ)
・大学卒業まで教育にかかる学費は無料である。学業に家庭の負担が少ないのが特徴である。
・子どもの多い世帯ほど税率は低くなる。
・出産休暇中は、出産保険から産休手当(手取り賃金とほぼ同学)が支給される。
・乳幼児独自手当(地方が独自で行う事ができる制度)
【保育所設置の状況】
・3歳未満の保育所は日本と同じように足りていない。
・県において保育所の設置も行っている。保育ママの認定も行なっている。
【主な質問内容】
・3世代同居の世帯について?
(日本では祖父母がかかわる子育てが多い。しかし、フランスは親が54%、施設32%、ベビーシッターが2%、祖父母は5%。フランスは社会全体で子育てに取り組む風潮が強い。)
・財源の負担について?
(国が4割負担。しかし現在は所得要件をかすというような状況、それだけ財政が厳しい状況になってきている。経済界からは、事業所の負担を増やす事が競争上のデメリットになっているといわれている。)
【所見】
フランスと日本には出生率に差があるが、一概に制度だけの問題ではなく、フランスの社会的背景、文化が関係している部分もある。
出生率の増加には、父親が子育てや家事に関われる環境を整える必要がある。また、所得の低い子育て世代に対する公的資金による金銭的支援は必要である。
保育所などの保育サービスの充実は欠かせない。
【クレア・パリ事務所における調査の様子】
(福島県の現状説明と風評に対する支援の要請)
在フランス日本国大使館(フランス)表敬訪問
日時:平成28年10月28日(金) 17時45分~18時15分
対応者:川村 博司 氏 (在フランス大使館 次席公使)
:富真 重光 氏 (在フランス大使館 一等書記官)
:國代 尚章 氏 (在フランス大使館 一等書記官)
【団長挨拶(柳沼 団長)】
私たちは福島県海外行政調査の一行であります。震災、原発事故から5年7か月。この間、皆さま方々から様々なご支援を頂きましてありがとうございます。福島県は未だ風評被害に苦しんでいる。これからの福島の復興の為にご支援よろしくお願いします。
【調査先】
日仏両国は民主主義、人権尊重、表現の自由、法治主義、市場経済という基本的価値観を共有し、また文化、芸術、科学技術といった面で、それぞれが大きな力を有する重要なパートナーである。またフランスは、国連安全保障理事会常任理事国として国際平和と安全の維持に大きな貢献を果たしている国でもある。我が国もまた積極的平和主義の下、国際秩序の安定に主体的に貢献をしていく意味で両国は重要なパートナーである。
【調査目的】
・出生率の高いフランスの子育て制度
・福島の原発事故と、フランスの原子力事情
・フランスが抱く福島に対するイメージ
調査結果
【フランスの家族政策の特徴】
事業主拠出金や租税等を財源とした家族手当の支給、子育てに係る税制上の優遇措置や各種休暇制度など、多様で手厚い家族政策を歴史的に展開。
(子どもの数が多いほど所得税負担が緩和される税制、託児所等やベビーシッターに支払う費用の50%を税額控除できる制度)
多様な保育サービス(託児所・保育ママ・ベビーシッター等)が選択可能。これらに加え、労働時間が短いこと、男性の家事育児時間が長いことなどが、高い出生率と女性労働力率を下支えしている。
こうした中、2015年7月から家族手当に所得要件が設けられたことはフランスの家族政策の大きな転換点と言える。また、特に3歳未満の託児所の確保が課題となっている。
【福島の事故後のフランスの原子力事情】
総電力量の76.3%が原子力に依存。2015年7月、原子力発電の割合を2025年までに50%に引き下げることや、原子力発電設備容量の上限を63.2GWとすること等を定めた「グリーン成長のためのエネルギー転換法」が成立した。
福島第一原子力発電所事故後、早期に日本に原発関連支援物資を提供。高レベル汚染水の処理、土壌汚染等に係る協力に向けた専門家の派遣が行われた。
【福島県が行っていくべきこと】
風評払拭の為には、福島の事故の現状をきちんと発信していく必要がある。福島県全体が汚染されているというイメージ、誤解をきちんと説明、解いていかなければならない。農作物の輸出再開には、何度も丁寧な説明が必要である。そのために大使館も最大限協力していく。
【在フランス大使館 川村次席公使との意見交換】
(福島県の現状説明と風評に対する支援の要請)
(ノルウェー報告書へ続く)
フランス、ノルウェー、デンマークの3か国を訪問。
フランスでは原発の廃炉解体、処分場問題の調査。
ノルウェー、デンマークでは再生可能エネルギー、福祉問題を調査。
昨日、私の報告書がまとまりましたので福島県議会へ提出しました。
容量の関係で各国ごとに報告書をのせます。
以下、ご覧いただければと思います。
福島県議会 海外行政調査 報告書(フランス)
廃炉対策・エネルギー政策及び福祉政策関係調査(北欧班)
( 報告書作成者:椎根 健雄 )
調査目的
震災及び原発事故後における本県の重要課題としては、原発事故の完全収束、県内原発「全機廃炉」に向けた廃炉作業の促進、放射性廃棄物の処理対策などが山積している。また、「再生可能エネルギーの先駆けの地」を目指す本県は、「福島県復興計画」において目指している「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり」の実現に向け、再生可能エネルギーの活用による環境との共生が図られた社会づくりの推進が求められている。
2040年頃を目途に県内エネルギー需要の100%相当以上の再生可能エネルギーを生み出すとした目標への歩みを着実に進めるため、新エネルギーによるエネルギーの地産地消の取組や、関連産業の集積に向けた動きを加速させる必要がある。
本県は、東日本大震災・原発事故の影響により、子どもと家庭を取り巻く環境が大きく変化している。また、急速な少子化の進行に対応するためにも、社会全体で子育てを支援する体制づくりを進め、安心して子どもを産み、育てることができ、かつ、子どもが大切にされる社会を目指す必要がある。
マルクール原子力地区(フランス)
日時:平成28年10月27日(木) 13時00分~16時15分
対応者:フィリップ・ギーベルト(CEAマルクール地区所長)
:サミュエル・ブランシャール (UP1解体プロジェクト責任者)
:マガリ・バーシェル (CEAコミュニケーション副部長)
:ドミニク・ブィタリ (CEA国際関係部員)
:シルバン・グリニョン(マルクール地区 訪問センター担当)
:フランク・ローラン (フェニックス施設長)
※CEAとは、フランスの原子力代替エネルギー庁の事
※CP1、フェニックスは原子炉名
【団長挨拶(柳沼 団長)】
東日本大震災においては、ご支援を頂きありがとうございます。本日の調査を震災からの復興に役立てたいと思いますので、よろしくお願いします。
【調査先】
原発の先進技術を活用した、原子力発電所の解体作業地区。パリの南約600キロ。ブドウ畑に囲まれた約280ヘクタールに、核施設が集うマルクール原子力地区がある。その中で原子力発電所の解体が進む。フランスで国内初となるプルトニウムを抽出していた原発の再処理工場「UP1」と高速炉の「フェニックス」調査。
「UP1」で行われている解体作業は、汚染エリアの測定、切断、放射性物質の飛散防止、搬出ルートの選定など幅広い分野の複合技術であり、大半が遠隔操作で行われている。より安全な技術の選択肢を組み合わせながら進める廃炉の現状を学ぶ。
フェニックス(高速炉)は1974年~2009年に稼働。現在、解体を行う準備を進めている。
【調査目的】
廃炉、解体に関する調査
・廃炉、解体技術
・作業環境、情報公開
・廃炉工程、予算
・福島第一原発事故後の原子力政策
・福島第一原発事故収束に向けてのアドバイス
※高度な廃炉技術のノウハウを本県の原子炉の解体作業等の促進にいかす。
調査結果
【廃炉技術について】
作業員がモニターを見ながら遠隔操作でロボットを操り、汚染された部分を切断する。ロボットは構造が複雑で狭い場所でも、かなり柔軟に動かすことができる。それでも、再処理工場は汚染度が高い場所が多く、液体状の廃棄物の扱いも難しいため、97年に停止したUP1の解体を終えるのは2035年ごろ、40年はかかるという。
科学的な液体により除染を行い、ロボットや人間により解体、切断、一つ一つ片づけていく。液体はガラス固化している。現在、マイストロというレーザーを使用し切断を行うことができる機械を利用(マイストロは、去年の12月より世界初の利用が始まった、最新機である)。
マイストロはアームの先端を変化させる事ができ、30分で人が死ぬ高レベルの解体を行える。アームを原子炉に入れ、1500個ほどに解体、解体物を梱包してセメント化、最終的に大きな12個のセメントにする。
フェニックス(高速炉)においては、国より100%の研究費を頂き、廃炉ロボットや、廃炉に関わる研究、高濃度の放射線量を低減させる研究を行っている。解体においてはロボットを使用。原子炉を高レベルから低レベルにするのは、時間をかけ一つ一つ物理的に行っていく必要がある。線量の低下に向けて、特殊なガスを充満させその後洗浄する方法を行っている。
【主な質問内容】
解体地区における住民への情報公開はどのように行っているのか?
(CEAには住民への情報公開に対し独立した部がある。原子力の透明性をめざすための独立した部である。これは法律で決まっている。常に広報により情報を公開し、報告書も定期的に発行している。)
独立した情報公開の部というのは、どのようなメンバー構成か?
(地域の議員、農業者、研究者、様々な職種の方々で構成されて、独立性が保たれている。)
高レベル廃棄物の最終処分場の場所は決まっているのか?
(現在ビュールとアンドラに計画中であるが、世界的に最終処分場はオンカロ以外には無い。現在はこの場所に保管しているのが状況である。)
福島の事故にもここで使われる廃炉技術は利用可能か?
(マイストロの機械は高レベルの放射線の現場でも利用可能である。ただ、解体、そして除染にはものすごい時間がかかる。)
【所見】
本県の重要課題として掲げる原発事故の完全収束、県内原発「全機廃炉」に向けた廃炉作業の促進には、マルクールで行われているような遠隔操作ロボットを活用した技術等は欠かせない。フランスで行われている高度な廃炉技術のノウハウを、本県の原子炉解体作業の促進に活かしていくべきである。
現存する原子力発電所の廃炉にも相当な年月と技術を必要としている。そういった意味で、事故がおきた本県第一原発の廃炉は、困難を極めると同時に、国家レベルの作業として長期にわたって取り組む人員、技術、お金、覚悟が必要である。
【マルクール原子力地区における調査の様子】
ローブ処分場(アンドラ)(フランス)
日時:平成28年10月28日(金) 9時30分~12時45分
対応者:シェルマ・トラバ 氏 (処分場広報担当責任者)
:チィエリー・ロショット 氏 (処分場広報担当)
【団長挨拶(柳沼 団長)】
東日本大震災においては、ご支援を頂きありがとうございます。本日の調査を震災からの復興に役立てたいと思いますので、よろしくお願いします。
【調査先】
1992年から操業。予定操業期間は60年。ピット(コンクリート)方式処分場。敷地面積95ha(うち処分場30ha)。定置容量1,000,000㎥(2008年末時点での定置量219,939㎥)閉鎖後は300年のモニタリングを実施予定。現在従業員約640名。操業費33,600,000ユーロ。
【調査目的】
・中低レベル短寿命廃棄物処分場についての調査
・施設の概要調査
・海外における放射性廃棄物処分の現状の調査
・本県における中間貯蔵施設の整備等についての課題を検討
調査結果
【処分場の役割と特徴について】
シェルマ・トラバ処分場広報担当責任者より、中・低レベルの放射性廃棄物処理施設と最終処分場の現状と問題点の説明を受けた。
ローブ処分場。各地よりでてくる放射性廃棄物を保管している。
フランスにおいては、原発以外にも、9パーセントは軍隊、3パーセント住宅、1パーセント医療関係から排出されている。核、クラス分けをして処分を行っている。半減期が31年以下のものと31年以上のものに区別して保管を行っている。一番長いもので45億年(ウラニウム238)セシウム137が30.1年の半減期になります。天然放射能になるまで300年監視する。ローブ処分場は、アンドラが中・低レベルの廃棄物を保管している。様々な放射性物質がある。レベルが高い、低い、半減期が長い、短いもある。それぞれの特性に応じてフランスでは保管場所が変わる。
アンドラは1991年まで原子力規制庁に属していた。現在は、研究省・エネルギー省・環境省に属している。半減期は長いが、低レベルは地表近くに保管(フランスにはここを含め3か所の処分場がある)。半減期が長く、レベルが高い物は、地中深くに保管している。放射性廃棄物の管理において世界最大規模である。
(その後、現地調査に入る。写真撮影は特定の場所以外、保安の関係で禁止)
ローブ処分場の大きな役割
1、廃棄物の監視
2、研究・廃棄物処分場の設計
3、発電所でない処からの廃棄物を保管
4、汚染された部分の除染
5、フランス全土での放射性廃棄物の排出の情報管理
6、一般の方、学校、地域への情報提供(教育施設も兼ねている)
放射性物質に対する対策
・放射性廃棄物の種類よって、管理の仕方が変わる。梱包の種類が違う。コンクリートや包装材が違う。
・雨から守るための建物がある(汚染物質がでた時に、その雨も貯める貯水槽もある。)
・岩盤の種類がよい(砂の層・粘土層・岩盤)と水がしみこまない地層である。
施設概要
・100万立方メートルまで保管できる施設である。
・保管場所が限られる為、廃棄物をコンパクトにする施設もある
・廃棄物の排出者は、フランス電力62%、原子力規制庁19%、アレバ社18%、のこり1%は医療関係の物で構成されている。
・各地の放射性物質の輩出状況を監視・管理している。(インターネットでもみる事ができる)
※大切なのは、放射性物質に対する情報の公開と安全性。
廃棄物は処分場、保管場が無かった初期、海に捨てていた時期もある。現在は、しっかり監視と保管をしている。ヨーロッパ諸国において15万トン海に捨てた。当時は海も汚染された。イギリスとフランスが一番初めに海への投棄を止めた歴史がある。
外国の放射性物質は受け入れてはいない。以前は保管をしていた時期もある。モナコだけは例外で、ドラム缶3つだけ引き受けている。
【所見】
本県が重要課題として位置づける中間貯蔵施設の整備等には、現在ローブで行われている中・低レベル放射性廃棄物の保管における技術は参考になる。このノウハウを、本県の中間貯蔵施設の整備に活かし課題を検討していくべき。
中低レベル短寿命廃棄物処分場施設は、地域住民への丁寧な説明と理解が必要である。また、候補地となる場所の安全性の確保は最優先である。情報の公開と、セキュリティーの確保をしっかり行う必要がある。
【ローブ処分場における調査の様子】
クレア・パリ事務所(フランス)
日時:平成28年10月28日(金) 16時00分~17時00分
対応者:荒井 陽一 氏 (クレア・パリ所長)
:古橋 悦子 氏 (クレア・パリ次長)
【団長挨拶(柳沼 団長)】
私たちは福島県海外行政調査の一行であります。震災、原発事故から5年7か月。この間、皆さま方々から様々なご支援を頂きましてありがとうございます。福島県は未だ風評被害に苦しんでいる。そういった中、人口減少など県は課題を抱えております。今回は、人口問題について調査をさせて頂ければと思います。
【調査先】
(財)自治体国際化協会パリ事務所(通称 クレア・パリ/CLAIR Paris)は、日本の地方公共団体等に対して支援を行っている。日本の地方公共団体が活動対象国(フランス、ベルギー(フランス語圏)、スイス(フランス語圏)、スペイン)で活動される際、訪問先へのアポイントメント、訪問期間の設定、通訳、国際比較や制度比較などに関する情報提供や支援をしている。
【調査目的】
・人口問題対策
・少子化対策の政策
・家族問題
・政府の支援策
・若者の就業
調査結果
【家族政策と子育て・結婚の現状について】
・フランスは出生率1.96、日本は1.46。その中をみていく。
・フランスにおいては女性の就業率が高く、25歳から49歳までの女性の労働力率は8割超えている。労働時間は週35時間労働(フランスは日本に比べ労働時間が短い関係で、男性が家事に加わる率も高い。)
・パックス(同性の結婚)を認めている。離婚をするのも簡単。
・総出生数中の婚外子の割合が5割を超すのが特徴(日本は2%)
・フランスの子育て支援政策は、高齢者や障がい者等も含めた家族全体を総合的に支援する国の「家族政策」の中に位置づけてある。仕事と家庭の両立を、保護者が望む形で実現できる仕組みを提供。
【子育てにおける税制面での優遇制度】
・子育て世帯に対する手当と税制上の優遇措置が併存(日本は手当のみ)
・大学卒業まで教育にかかる学費は無料である。学業に家庭の負担が少ないのが特徴である。
・子どもの多い世帯ほど税率は低くなる。
・出産休暇中は、出産保険から産休手当(手取り賃金とほぼ同学)が支給される。
・乳幼児独自手当(地方が独自で行う事ができる制度)
【保育所設置の状況】
・3歳未満の保育所は日本と同じように足りていない。
・県において保育所の設置も行っている。保育ママの認定も行なっている。
【主な質問内容】
・3世代同居の世帯について?
(日本では祖父母がかかわる子育てが多い。しかし、フランスは親が54%、施設32%、ベビーシッターが2%、祖父母は5%。フランスは社会全体で子育てに取り組む風潮が強い。)
・財源の負担について?
(国が4割負担。しかし現在は所得要件をかすというような状況、それだけ財政が厳しい状況になってきている。経済界からは、事業所の負担を増やす事が競争上のデメリットになっているといわれている。)
【所見】
フランスと日本には出生率に差があるが、一概に制度だけの問題ではなく、フランスの社会的背景、文化が関係している部分もある。
出生率の増加には、父親が子育てや家事に関われる環境を整える必要がある。また、所得の低い子育て世代に対する公的資金による金銭的支援は必要である。
保育所などの保育サービスの充実は欠かせない。
【クレア・パリ事務所における調査の様子】
(福島県の現状説明と風評に対する支援の要請)
在フランス日本国大使館(フランス)表敬訪問
日時:平成28年10月28日(金) 17時45分~18時15分
対応者:川村 博司 氏 (在フランス大使館 次席公使)
:富真 重光 氏 (在フランス大使館 一等書記官)
:國代 尚章 氏 (在フランス大使館 一等書記官)
【団長挨拶(柳沼 団長)】
私たちは福島県海外行政調査の一行であります。震災、原発事故から5年7か月。この間、皆さま方々から様々なご支援を頂きましてありがとうございます。福島県は未だ風評被害に苦しんでいる。これからの福島の復興の為にご支援よろしくお願いします。
【調査先】
日仏両国は民主主義、人権尊重、表現の自由、法治主義、市場経済という基本的価値観を共有し、また文化、芸術、科学技術といった面で、それぞれが大きな力を有する重要なパートナーである。またフランスは、国連安全保障理事会常任理事国として国際平和と安全の維持に大きな貢献を果たしている国でもある。我が国もまた積極的平和主義の下、国際秩序の安定に主体的に貢献をしていく意味で両国は重要なパートナーである。
【調査目的】
・出生率の高いフランスの子育て制度
・福島の原発事故と、フランスの原子力事情
・フランスが抱く福島に対するイメージ
調査結果
【フランスの家族政策の特徴】
事業主拠出金や租税等を財源とした家族手当の支給、子育てに係る税制上の優遇措置や各種休暇制度など、多様で手厚い家族政策を歴史的に展開。
(子どもの数が多いほど所得税負担が緩和される税制、託児所等やベビーシッターに支払う費用の50%を税額控除できる制度)
多様な保育サービス(託児所・保育ママ・ベビーシッター等)が選択可能。これらに加え、労働時間が短いこと、男性の家事育児時間が長いことなどが、高い出生率と女性労働力率を下支えしている。
こうした中、2015年7月から家族手当に所得要件が設けられたことはフランスの家族政策の大きな転換点と言える。また、特に3歳未満の託児所の確保が課題となっている。
【福島の事故後のフランスの原子力事情】
総電力量の76.3%が原子力に依存。2015年7月、原子力発電の割合を2025年までに50%に引き下げることや、原子力発電設備容量の上限を63.2GWとすること等を定めた「グリーン成長のためのエネルギー転換法」が成立した。
福島第一原子力発電所事故後、早期に日本に原発関連支援物資を提供。高レベル汚染水の処理、土壌汚染等に係る協力に向けた専門家の派遣が行われた。
【福島県が行っていくべきこと】
風評払拭の為には、福島の事故の現状をきちんと発信していく必要がある。福島県全体が汚染されているというイメージ、誤解をきちんと説明、解いていかなければならない。農作物の輸出再開には、何度も丁寧な説明が必要である。そのために大使館も最大限協力していく。
【在フランス大使館 川村次席公使との意見交換】
(福島県の現状説明と風評に対する支援の要請)
(ノルウェー報告書へ続く)
by shiine-takeo
| 2016-12-01 12:04
| 福島県